「はり」という道具について
はじめまして。用賀さいとう治療院の斉藤淳と申します。
本日は、「はり」に興味や関心はあるけれど、それがどういうものなのか、
実際体にはどういう影響を与えるものなのかなどと疑問をお持ちの方に向けて、
多少なりともイメージを持っていただけたらいいなと思い、記事を書いてみました。
まず、実際に治療に使う「はり」ですが、現在鍼治療に用いられるものは、ステンレス製のものが多く、一回限りで廃棄してしまうディスポーザブル(使い捨て)がほとんどとなっています。
太さや長さは様々ありますが、普段当院で用いている鍼は、直径が0.14mm~0.24mm
(ちなみに、人間の太い髪が0.12mm~0.25mm程度)、長さは1cm~6cm程度のものを必要に応じて使い分けています。
一般的に「はり」というと、注射のはりや裁縫針をイメージされる方も多いかと思うのですが、それらと比べるとだいぶ細いと言えると思います。
したがって、初めて鍼を体にうつ時は皆さんある程度緊張されていることが多いのですが、実際にうってみると、「ほぼ痛みを感じない」とおっしゃる方が大多数です。
ただ、痛みの感受性は個人差が大きいので、敏感な方にとっては、少し苦痛に感じられる場合もあるというのが、正直なところです。
その場合は、見込んだ治療効果との兼ね合いで、ある程度我慢していただくか、もしくは苦痛が上回るという場合はほかの手段を用いて治療していくケースもございます。
そのあたりは、プロとしてのこちらからの考えと、患者さんのご意見とを摺り合わせつつ、状況を判断していきたいと考えており、決して無理に押し付けるような施術は行わな
いようにしてまいりますので、ご安心ください。
次に「はり」の効果に関してですが、ここでは細かい作用機序などではなく、まずはおおざっぱに鍼の作用をイメージしていただきたいので、そのような書き方をいたします。
まず前提として、「はり」は体にとって「異物」です。
「異物」が体に侵入してくるわけです。
「異物」に対しては、体(脳を含めた)はその刺激を信号と捉え、なんらかの反応をします。
ある場合には、「血液を多く送り込め」であったり、「ある組織の緊張を緩めろ」であったり、「胃の蠕動運動を高めろ」であったり。
ひいては、それらいくつかのメッセージを同時に発して「体全体の防衛反応を引き出せ」ということであったり。
実際の施術においては、その刺激(鍼や灸や手技)を、どういう意図で体に与えるのかを
考えつつ、刺激する場所やその強度などを決めていくことになります。
つまり、「はり」は患者様ご自身が持っている治癒能力をうまく引き出すために使う道具であり、「きっかけ」と考えていただくのがよろしいかと思います。
うまくそれらが引き出せれば、体は勝手に快方に向かうはずです。
わたしは、それを手伝う補助役だと、自分を捉えています。
人間は本来、自己保存の能力があって、自分自身を回復に向かわせる力があります。
それをうまく引き出せる「きっかけ」に自分自身なれればと思うと同時に、
「はり」はそのような優れた力を持つ道具と感じていただけたら嬉しく思います。